嘘つきピエロは息をしていない


「吉川さんから勧誘を受けていまして。せっかくなので見学させていただければなと思ったのですが……よろしいでしょうか?」

(えぇえええ!?)

 たしかに私はナイキくんを勧誘したよ。

 でもでも。

 一度もいい返事くれなかったよね。

 むしろ敵意向けてきてさ。

 それについて謝って応援までしてくれたけど、

『俺にできることなにもない』って断言していたよね。

 それがいきなりなにやってくれてるの!?

「なんだ、いるんじゃん。しかも上玉」

 上機嫌にそういう、いっちゃん。

 いやいや。

 騙されないで。

 その男は入部するつもりなんてないよ……!

「あのさぁ、ナイ――」
「約束していたわけじゃないですし、いきなりでご迷惑でしたら日を改めさせていただきますが」

 私に口を挟ませないよう、間髪入れずに話を進めるしてくるナイキくん

「いや、来なよ。いつでも大歓迎。きりの友達なら尚更……な? きり」

 いっちゃんがそう言うなら案内せざるを得ない。

 しぶしぶ頭を縦に振った。

「俺は、二年の一色。よろしく」
「よろしくお願いします、一色先輩」

 目の前で幼馴染のお兄さんと、謎多き同級生が握手を交わしている。

 なんとも異様な光景だ。

「礼儀正しいな。内藤くんは」

 いやめっちゃ口悪いよ、その男。

 前を向いて歩き始める、二人。

 その背中を見つめていると、ナイキくんが急にこっちを振り返り、薄笑いを浮かべ――

(……!?)

 ベッと舌を出すと、前を向いた。

「なっ」
「きり、どうした? 来いよ」
「……ウン」

 本当の本当に、なにを考えてるの――?

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