嘘つきピエロは息をしていない


 いっちゃんは演劇部の脚本係として活躍している。

 いっちゃんの物語は、うまく言えないけれど“いっちゃんワールド”が炸裂していて本当に魅力的だと思う。

「ねぇ、いっちゃん」
「ん?」
「私がこの学校で一番仲いいのは……いっちゃんだよ?」
「さいですか」
「いっちゃんと同じ年だったら、もっと一緒にいられるのになぁ」

 もう一年はやく生まれてきたら一緒に入学して一緒に卒業できたのに――と、どうしようもないことを考えてしまうときがある。

「それさぁ。ちょっとくらい期待していいの?」

 ――へ?

「期待って……」

 どんな期待?

 って、聞こうとしたとき。

「吉川さん」

 突然、私たちの前に現れたのは――

「なっ、」

 丸眼鏡を外し、制服を着崩し、髪もスッキリしているナイキくんだった。

「僕、吉川さんの友人の内藤(ないとう)と言います」

 ぼ、僕……?

 っていうかナイトウって――!?
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