嘘つきピエロは息をしていない


「ンな嫌そうな顔すんなって」
「なに考えてるの。どうして見学なんか。内藤って誰なの」
「落ち着けって」
「これが落ち着いていられる状況……!?」
「そんなに思ってること顔に出して、すぐ感情的になるお前が。演劇部なんてつとまんのかねぇ。幼稚園児の方が上手にお遊戯しそうだな?」

 ――出たな、ブラックナイキ。

「そういうナイキくんは、リバーシみたいだよね。瞬時に白黒キャラを変えられて。良い子の内藤くんがまさか毒舌で腹黒いなんて想像できないもんね」
「どうも」

 褒めてない。皮肉だ。

「喜べ。俺が、見学に来てやったんだ」

 ほんと、根っからの俺様気質というか。

 上から目線だよね。

「いっちゃんのこと騙さないでよ」

 新入部員が来たって期待してるよ?

 これでやっぱりやめますってなったら、落ち込ませちゃうだけだ。

「随分親しげなんだな」
「え?」
「別に。それより部員は増えたのかよ」
「そっ、それは……」
「その様子じゃ収穫ゼロか。だと思ったけどよ」
「嫌味言いに来たの!?」
「ちげぇよ」
「冷やかしなんでしょ」

 いらないよ、そういうの。

「助けてやろうか」

 ――え?

「できることなんてないって……」
「あぁ。言った」
「それじゃあ――」
「昼休み」

 ――?

「昼休みなら、使える。ということに気づいた」
「……え?」
「放課後は無理だ。俺は忙しい」
「塾、とか?」
「天才は勉強しない」
「は?」
「昼休みや朝のSHR前なら幾らか俺の時間をやってもいい」
「本当? 入部してくれるの?」
「しねぇよ」
「えぇ!?」
「とりあえず俺の秘密バラさないって約束しろ」

 ――!

「その分、ひと働きしてやる」
「……交換条件?」
「そういうこと」
「私、イヤイヤ助っ人して欲しくない」
「嫌々だろうがなんだろうが。この俺がピンチヒッターになってやるって言ってんだよ」
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