嘘つきピエロは息をしていない

 つまり、私がナイキくんの秘密を守る代わりに、ナイキくんが演劇部の手伝いをしてくれるの?

「私、ナイキくんが秘密にしてること誰にも言わないよ?」
「どうだか。女なんてみんな口軽いだろ」
「そんなの偏見だよ!」

 ナイキくんは他人を全然信用していないよね。

「あんなに俺のこと欲しがってたクセに」
「だって。交換条件でお芝居に携わってもらうなんて邪道だし」
「はぁ? 西条とファン釣ろうとしてたお前が言う台詞かよ」
「そ、そんな言い方しないで! 純粋に部活を楽しんでもらいたかったんだから!」

「まぁまぁ。面白そうな話じゃないか」

 ――!?

 誰もいないと思っていた部室の奥の扉から出てきたのは、相川部長だった。

「いい男」

 部長がナイキくんの前に立ち、美男美女が並び、凄く絵になっている。

 悔しいけれど、やっぱりナイキくんには華がある。

 それは作られたものじゃなくて自然に生まれ持ったもので。

 間違いなく彼は人を惹き付ける天才だ。

 ナイキくんに舞台に立ってほしい。

 一緒にお芝居がしたい。

「話は聞かせて貰った。救世主ってわけか」
「ふ、ふざけるなって話ですよね。わたしたちが真剣に取り組んでいるのに、条件つきで、口止めみたいな参加……」
「吉川」
「は、はい!」
「やってもらいましょう」
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