嘘つきピエロは息をしていない
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吉川が納得いかない顔で部室から出て行った。
おおかたイッシキって先輩や部長に、いまいちやる気の見えない俺が気に入られたのがムカついたんだろう。
ほんとわかりやすいヤツ。
――言えるかよ
これは俺が死ぬほど考えて出した答えだ、なんて。
新しいことを始めるのは難しい。
だったらサポートくらいしかできることねぇだろうが。
なにが邪道だ。
……困ってるクセに。
俺のこともてはやして入部させようとか、使えるものは使ってやるってズルい考え、吉川の中には一切ないんだろーな。
アイツが芝居するところますます想像できねぇわ。
「よろしく、内藤くん」
「こちらこそ。相川部長」
握手しようと差し出した手を、力強く握られた。
「なにが目的か聞かせてもらおうか?」
「なんのことですか?……部長」
「下手くそ」
「え?」
「綺麗じゃないよ。君の演技」
そういうと、パシンと手を振り払われた。
「君は周りを欺いてきた。それで自信をつけたのだろうね? だけどそんなもので観客の心は掴めないということだけは覚えておくといい」
綺麗な顔して、コワイ女。
掴むもなにも。
舞台に立つ気はさらさらねぇよ。
「わかりました」