嘘つきピエロは息をしていない
きりは昔からいい事があると、きまって一番に俺に報告してきた。
きりのいう“いいこと”には幅があり、ほんの些細なことからビッグニュースまで多種多様だ。
たいていは俺にとってはくだらないことで、長々と話す与太話を殆ど聞き流していた。
たとえば誰でも高得点とれそうな簡単なテストで80点がとれただとか(いやそこは100点とって喜べ)、四つ葉のクローバーを三時間探してようやく見つけれただとかいうことは(あのときはさすがに熱中症の心配をした)、なにがそんなに嬉しいのだろうと感じていたのが本音だ。
俺ならそんなことでは絶対に喜べない、ということできりは喜ぶ。
きりの話を聞くときに重要なのは話の内容ではなく、その報告をしているきりが"笑っている"ということだった。
きりは、とても嬉しそうにしていた。
そこに俺がきりの話を聞く価値があった。
そんな風に過ごすきりとの時間は、今も変わらず大切なものだ。
こんなことを言うのは本人を傷つけてしまいそうなのでとても言えないが、きりは、ちょっと変わっている。
たかがクローバー探しに、炎天下の公園で三時間粘るなんてそうできることじゃない。
『だって四つ葉のクローバーは願い事を叶えてくれるんだよ? 見つかるまで探したくなっちゃった!』
目を輝かていたきりは鼻の頭を赤くしていたが、日焼けしたことなんて微塵も気にしていなかった。