嘘つきピエロは息をしていない
これまで俺がきりから甘えられたこと――いいや、振り回されてきたといっても過言ではないのだが。
きりとの思い出は語りつくせないくらいあって、それらが嫌などころか思い返せば頬が緩む程にどれもかけがえのない出来事になっているのだから、俺は少々過保護というか溺愛気質というか。
つくづくこの子に弱いんだなという気にさせられる。
「へぇ。忍者みたいな男子が演劇部に興味示したのか」
「そうなの、いっちゃん! 部活見学の約束もしてくれた」
「でかした」
サラサラのストレートセミロング。
染められていない自然色。
そんな昔から変わらないヘアスタイルの頭を撫でてやると、
「へへ」
得意げな顔で笑ったきり。
ずっとこのまま撫でていたいが、そんなわけにもいかない。
そっと、きりから手を離した。