嘘つきピエロは息をしていない


 最近真琴っていうバスケ部の友達ができたらしい。

 それを聞いて少し安心したのは、この学校に仲のいい友達がいないみたいだったから。

【一番仲いいのは……いっちゃんだよ?】

 一番は、俺らしい。

 まるできりは、兄離れできない妹みたいだ。

 俺のことを家族のように思っているに違いない。

 そんなきりのことを俺は、特別な女の子だと感じている。

 妹のようで、妹とはまるで別物だ。

 しかし。

 内藤とかいう男。

 "友達の友達"なんて言っていたが、怪しい。

 きりが言い返せないのをいい事に話の主導権を握っていた。

 なにかを隠すように。

 それに気づいて尚、俺が平静を装ったのは、内藤を泳がせるためだ。

 相川部長も心なしか気に入ったようだし、ひとまず敵意は向けたりはしないが信じていない。

 きりの幸せを――きりの未来をアイツが脅かすっていうなら、俺は……

「いっちゃん、聞いてるー?」
「ああ。聞いてるよ」
「よかったぁ」

 身体は成長しているのに心は幼い少女みたいなきり。

 かわいいきり。

 きりといつか結ばれたい――なんて俺が考えているとは、この愛くるしい生き物は想像もしていないのだろう。

「おもしろそ」

 まだ、はやい。

 だけどいつか俺が自分の本当の気持ちを伝えられた日に、きりは、いつもと変わらない笑顔で俺を受け入れてくれるだろうか?
< 75 / 294 >

この作品をシェア

pagetop