嘘つきピエロは息をしていない
最近真琴っていうバスケ部の友達ができたらしい。
それを聞いて少し安心したのは、この学校に仲のいい友達がいないみたいだったから。
【一番仲いいのは……いっちゃんだよ?】
一番は、俺らしい。
まるできりは、兄離れできない妹みたいだ。
俺のことを家族のように思っているに違いない。
そんなきりのことを俺は、特別な女の子だと感じている。
妹のようで、妹とはまるで別物だ。
しかし。
内藤とかいう男。
"友達の友達"なんて言っていたが、怪しい。
きりが言い返せないのをいい事に話の主導権を握っていた。
なにかを隠すように。
それに気づいて尚、俺が平静を装ったのは、内藤を泳がせるためだ。
相川部長も心なしか気に入ったようだし、ひとまず敵意は向けたりはしないが信じていない。
きりの幸せを――きりの未来をアイツが脅かすっていうなら、俺は……
「いっちゃん、聞いてるー?」
「ああ。聞いてるよ」
「よかったぁ」
身体は成長しているのに心は幼い少女みたいなきり。
かわいいきり。
きりといつか結ばれたい――なんて俺が考えているとは、この愛くるしい生き物は想像もしていないのだろう。
「おもしろそ」
まだ、はやい。
だけどいつか俺が自分の本当の気持ちを伝えられた日に、きりは、いつもと変わらない笑顔で俺を受け入れてくれるだろうか?