嘘つきピエロは息をしていない


「……吉川」

 無駄にテンション高ぇな。

「おはよ、ナイキくん!!」

 女に名前を呼ばれて胸が高鳴る日がくるなんて。

 しかもそれが、相川部長みたいな女ならまだしも――

「ちんちくり……うっわ」
「へ?」

 振り返って目で確認した吉川の姿に思わず驚いてしまったのは、前髪がいつのまにかすげぇ短くなってやがったからだ。

 なんだそれ。

 幼さに磨きかかってるじゃねぇか。

 いつもと違う吉川にドキマギしてしまうなんてマジでどうかしてる。

「話しかけんな」
「え!? でも」

 キョロキョロと大袈裟にあたりを見回す、吉川。

 リアクションいちいちでけでぇな。

「まわりに誰もいないよー?」

 ああもういいから止まれ。
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