嘘つきピエロは息をしていない

 そうだな。

 俺は周りと関わって来なかった。

 吉川とだって、こんなに関わるつもりなかった。

「……ンなことよりさ。どーなんだよ」
「なにが?」
「杉田や白木とお前が仲良くなったとかよりもだ。演劇部の危機ってのは、少しは救えたわけ?」
「もちろん! 少しどころか! このまま一人も欠けなければ廃部はないし、二人とも学祭の劇になんらかの形で参加してくれるみたい!」
「そーかよ」

 つーことは。アレか。

 これでお前の“居場所”消えずに済むわけだ?

「だからはやくナイキくんに報告したかったんだよ。喜びを分かち合いたくて」

 分かち合う?

「でも、なかなか会えないし。放課後は見当たらないし」
「な……んで俺まで喜ぶんだよ」
「え? 喜んでくれてるよね?」
「はぁ?」
「ピンチヒッター様々!」

 顔の前で手を合わせて俺のこと拝んでくるのはやめろ。

 俺はキリストか? 観音か?
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