嘘つきピエロは息をしていない
「反応が悪ければ引く。良ければ押す」
「その通り。見学、入部とトントン拍子に事が進んだってことは感触はよかったんだな?」
「うん!……でも、なんで私、初対面の竹千代くんたちと部活見学の約束まで交わせたの?」
「知るか。その場にいなかった俺に聞くな」
だいたいわかるけどな。
今のお前は俺をストーカーみたいに追いかけてきたときの吉川とはもう違う。
「ラッキーだったのかな」
「それはあるな。俺、言ったろ? 当たって砕けろって。そんな最初から上手くいく方が難しい。それでもまぁ、お前が一生懸命だったから。それが杉田や白木に伝わって話を聞いてもらえたのはあるだろ」
「え……」
「たしかに俺は手を貸したが、あくまで戦略であり戦術だった。それをコピーして実行しても負けるときは負ける。成果あげられたのは紛れもなくお前だ、吉川。幸運だった以前にお前が頑張った。ラッキーなもんか。お前が二人の男を動かしたんだ……よ……って、どうした」
吉川の頬が染まっていた。
思わずそっと触れたくなるくらいに、ほんのりと、桃色に。
そのとき俺たちの前を通り過ぎた男子が吉川の顔を覗いた気がして、咄嗟に吉川の前に立った。
……吉川のこの顔、誰にも見せたくない。