嘘つきピエロは息をしていない

 吉川の前で偉そうに振る舞って、自信家で怖いもんなしって感じの俺の脅威が実の母親だなんてことも。

 高校生にもなって一人で家からろくに出られねぇことも。

 携帯を親に管理されてることも。

 どれも絶対に知られたくねぇしな。

 ……ほんとダセえ。

「まぁ。吉川みたいな園児はある意味無害だからつるんでられるし」
「…………」
「相川部長も美人で色気あるクセに中身オトコみたいだから話しててラクだな。つーか、俺の女嫌いエピソードなんて聞いてもクソほどにも面白くねぇだろ。もう行くわ」

 これ以上近づかれると、吉川に、俺の弱い部分にまで触れられてしまいそうだ。

 やっぱり吉川といると俺は弱くなっていく。

 だけど、息は不思議と苦しくない。

 心地良い。

 ……人といることが、こんなにも。

「待って、ナイキくん」
「なんだよ」
「本当に……本当に、それだけ?」

 マジな顔つきで俺を見上げている吉川。
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