♥バレンタインの奇跡♥
「なに君泣いてるの?ほんとめんどくさいなぁ」

…っ!!


「うっせー!ハゲ親父!」

「なっ!?ハ、ハゲ!?」

気付けば私は叫んでいた。
さっきまで我慢しておさえていた感情が溢れ出す。


「あーそうですか!そうですよね!はいはい!わかりましたよ、辞めてやりますよ!給料も安くて何の得もない、優しさの欠片もない職場なんて!こっちから願い下げ!二度と来るかコノヤロー!さいなら」

一気にまくしたてると、私は一方的にその場を立ち去った。


「なっ…!?ハ、ハゲ?禿げてる?」

背中越しに店長の声が耳に入る。
店長はいつも頭のことを気にしていた。
いい気味だ。もっと言ってやればよかった!


焼きたてのパンの匂い。
パンが好きで始めたパン屋さんの仕事。
今日でお別れだね。
さよなら…。


私、職場にも見放された。
私なんか…誰からも必要とされてないんだ。

誰からも…。


店を出たとたん涙がボロボロこぼれた。
泣きながら、家まで帰った。
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