だったら俺にすれば?~オレ様御曹司と契約結婚~
すると、吐息が触れるような距離に、相変わらず瑞樹の顔があった。
切れ長の瞳が、甘く、きらりと光る。彼がつけている香水なのか、ふわりと甘く、さわやかなフローラル系の香りが玲奈を包み込む。
こんな男を魅力的だとは思いたくないが、悔しいかな、南条瑞樹は、どこからどう見ても、外見だけは完璧だった。
だから身内以外で、こんなに異性に近づいたこともない――自分にとっては前代未聞の近距離のはずなのだが、現実離れしたその存在感のせいで、大変な状況になっているという、当事者としての実感が湧かない。
まるで映画かドラマでも見ているような、そんな気がした。
「今、なんて?」
ポカンと見上げたまま問いかけると、瑞樹はハンカチで押さえていた手をそのまま玲奈の顎(あご)先に運び、軽く、すくうように持ち上げる。
「俺にすればいいと、言ったんだ」
そして玲奈の問いは、頬を傾けた瑞樹の唇によって、封じ込まれてしまった。
(えっ、キ、キ、キ、キスッ!?)
そう、これはキスだった。
瑞樹が覆いかぶさるようにして、壁際に玲奈を押し付け、口づけている。
「んっ……」
身動きして逃げようかと思ったが、動けない。