だったら俺にすれば?~オレ様御曹司と契約結婚~
 夢じゃない。
 確かに瑞樹の唇は、自分の唇にしっかりと押し付けられていて、なおかつ玲奈の唇の感触を味わうように、柔らかく動いている。

 十五回目の合コンから抜け出した場所で、まともに話したこともない御曹司の修羅場に遭遇したかと思ったら、求婚され、五分もしないうちに唇を奪われている。

「……お前の唇、柔らかいな……」

 味わうようにはみながら、瑞樹がささやく。まるでワインでも楽しんでいるかのような、軽やかな口調だ。
 だが唇は完全には離れていない。かすかに触れさせたまましゃべるので、くすぐったくて、背中がざわりと痺れていく。

 全身に甘い毒を流し込まれているような、いけないことをしている気がした。

「んっ……」
「なんだ、背中ぴーんと伸ばして……固まって……」

 ふふっと瑞樹が笑うと同時に、彼の両手がやんわりと、硬直している玲奈の背中と腰に回る。

「なんだよ、その態度……。まるで俺が、悪いこと、してる気になるだろ。そうじゃない、俺が相手なんだ。リラックスしろ……力を抜け。もっと俺に、かわいがられている実感を持て」

 彼の言葉に、キスに、体に触れる手に、ゾクゾクと震えるような快感に全身が包まれていることに気がついて――。

(ああ……ふわふわする……)

 それはとろりとした、甘美で強烈な誘惑だった。

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