王子は冒険者になる!

「アレク兄様。
 俺、『王』なる気は ないから。
 ってか、冒険者とかになりたいんだよな。」
「・・・は??
 何言って。」
「ほら、だから・・冒険者」
「そこじゃなくて!!
 フランは第二王子だろ。なんで、王になる気はないとか・・・
 王族としての誇りとして・・」
「はぁ。だーかーら。
 俺、アレク兄様好きだから「後継者争い」とかしたくないし。
 この世界を見てみたいんだ!だから、冒険者になる。」

「・・・はぁ。フランチェスコ。」

だれか、フランにいらないことを吹き込んだんだろうか。
確かに、第一王子である僕と、
「光」を使うであろう第二王子のフランを どちらを王に押すか
みたいな、貴族同士の争いは多い。

王である父も まだ決めかねているようだし。
そうだよな。
だって、僕の魔力はまだまだ『安全』とは言い難いし
これから安定する保証もないし。

やれやれ、
と思いながら優しくフランに話しかける。

「僕は、「黒もち」なんだよ。
 僕が何かあったときは お前が次の王だ。
 その自覚はしておけよ?勉学も怠るな。」
「・・・黒もち・・」

「あぁ。フランはそこまでまだ勉強してないかな。
 この、僕の魔力の「黒」は基本、忌み嫌われるだろう?」
「は?!」

「黒は 闇を使い 夜を収める。
 力を吸収し、人外を従える。だから不吉――」
「はぁぁあ?何それ。
 かっこいいじゃん。持ったいねぇ。 俺だって召喚とかやりたいのに。
 ってか、力を吸収もできるのか?」
「・・・いや、僕はできないけど
 一般的には、僕の力は嫌われてるぞ?」
フランは初めて知ったかのように
おおきく目を見開いた。


「そーなのかー?
 闇がなければ、夜寝れないのにな!」

あっけらかん、と 笑い飛ばすフランに、
僕はーーー衝撃を受けて ちょっと泣きそうになってしまった。
こんな素直に受け入れられていたのか・・・


< 25 / 150 >

この作品をシェア

pagetop