王子は冒険者になる!

あぁ、優しい弟でよかった。


「でも、フラン。
 僕が「黒」に飲まれたら、次の王はお前だ。
 だから・・」
「黒に、のまれる?」

あぁ、しらないのか。
そうだよな。
まだ『魔力』の勉強を始めたばかりだろうしな。


「うん。黒の魔力は 成長とともに
 膨らむ。それに耐えられなくなって 精神を病んだり、
 魔力を爆発させたり・・・ってごめん。ちょっと難しいかな?」
「いいや、大丈夫。 ってか、兄様は大丈夫だろ?
 そんな簡単に飲まれないって!
 ってか、魔力が膨らむなら 魔力を放出させればいいだけじゃん?」
あはははー
と、フランは笑った。
放出・・・。押さえつけるばかりで考えたこともなかったな。
無邪気に「兄様は大丈夫だろ?」とフランが言うと、
大丈夫な気がしてくる。

ふ。と 思わず、笑みがこぼれる。



「あぁ、いいなー。
 俺も、アレク兄様ぐらい 魔力大きくなるかな。
 召喚とか、してみてぇ。」

にこにこ、と笑うフランに、再び驚く。




「・・・ありがとう、フラン。」
「?何が?」


本当に、何が?って感じで僕を見るフラン。


君は知らないだろう。
その言葉で、僕がどれだけ、救われたか。



防音の魔法を解いたら、すぐにサントスと、
フランを迎えに来た騎士がやってきた。


「あぁ、そういえば兄様。
 この空中に陣を書くのはどうすればいいのですか?」
「あぁ。まだ早いんじゃないかな?
 フランの魔力が『安定』するのは10歳前後だからそれからだよ」
「げ??」

「魔術の時間に『球』を作ってるだろ?
 あれがすべての基本だよ。
 あれを練るのに 練習と鍛錬が必要だから、
 しばらくそれを頑張らなきゃな?」

ふ、と笑って、フランの金色のあたまを ぽんぽんと撫でた。

「まじか・・」
「言葉づかい!」
「・・・すいません。兄様。」
「自主練も、ダメだぞ?」
「え?」

やる気だったな?

「必要魔力と呪文の比率が取れていないと
 『陣』が発動しないし、
 自分の最大魔力も把握しないと、枯渇しすぎてしまうから・・・

 バランスも、安定もとれていない魔法は大爆発するから、
 最悪、死ぬぞ。」

「げ。・・・・ き、基本をゆっくり勉強していきます。」

ははは。
がんばれよ、と言ってまた撫でてやる。

あぁ、
弟に何かあれば、僕が助けよう。

そう思った アレッサンドお兄ちゃん、でした。



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