あなたと私と嘘と愛

「もう、あなたってやっぱり嫌な人…」

「一言余計だった？」

「分かってるなら言わないでくださいっ」


つん、と顔をおもいっきり反らすとちょうどのタイミングでエレベーターのドアが開いた。
だからそのまま一番に外に出て優斗を無視して背を向ける。


…まだ笑い声聞こえてくるし。

(笑いすぎでしょ？)

この前も思ったけど、彼は意外とよく笑う人だ。

普段は無表情という言葉が当てはまるほどクールなのに、一度こうして親しく話してみると案外違う。

そのギャップに少々の驚きと戸惑いはあるけれど、あまり嫌な感じはしなかった。
むしろほっとしてる自分に気付き、何故か自分でも変な気持ちだった。


「ごめん、ちょっといい？また気を悪くしちゃうかもしれないけど１つだけ忠告したい」


玄関に入り、靴を脱いだところで優斗が突然真剣な声を向ける。
だから当然私もその場で立ち止まり、何事かと向き直る。


「優しいだけの男には気を付けて」

「え…」

「なんか嫌な予感がする」


優斗はそう言って真剣な顔を向けてくる。


「…それは……」

「君を見てるとね。どうも危なっかしくて隙だらけだからさ。ちょっと心配なる」


そう言って伸びてきた手に何故か私の頭はぐしゃりと撫でられた。
その態度はいつもの嫌味な感じなどは一切感じられず、むしろ真剣そのもの。


「困ったことがあればいつでも言って？君は不満かもしれないけど一応家族だから」