あなたと私と嘘と愛
その言葉に一瞬だけど思考が飛んだ。
何を言っていいのか分からずただ彼を見つめ返すだけだったけど、急に体の体温が上昇したのをきっかけに慌てて背後に下がり優斗と距離をとった。
「…ま……」
「え?」
「…前向きに考えておき、ます」
赤い顔を見られたくなくて俯いた。
なんだこれは。
相変わらず余計なお世話なのに、こんな風に優しく言われたら何も反論できない。
ちょっとこれは…
むず痒さが強くなる一方で彼の側に居ずらくなり、私はまた何かを言われる前にそっけない素振りで優斗から背を向けた。
「じゃ…」
そして一目散に自分の部屋に入る。
何だかさっきから気持ちの変動が激しい。
そして優斗もまた予想外な態度ばかりを見せてくるから調子が狂う。
しかも優しいだけの男って…坂井さんのこと?
彼は何か危険な香りでもするとでも言いたいのだろうか?
違う。気のせいよ。
優斗はただ優しい男には気を付けろといっただけ。
別に彼に限られたことじゃない。
否定するよう違うと頭を横に振り、自分の気持ちを正当化する。
優斗に触られた頭がやけにじんじんし、暫く動悸も治まらなかった。