あなたと私と嘘と愛
「あ……」
「どうも、初めまして。坂井智輝と言います。亜香里さんのお兄さんですか?」
坂井さんが優斗を見るなりビシッと姿勢を正した。
彼もまた今までの緩い顔を引き締め、急に社会人としての顔になる。
だけどそんな挨拶にギョッとした。
そう言えば私…
優斗のことを坂井さんには兄だと言っていた。
苦し紛れの言い訳に嘘をついてしまったのだ。
「……お兄さん?」
だから当然そんな挨拶をされた優斗は怪訝そうな顔をする。
やばっ、と急に冷や汗をかく。
嘘をついたことがばれちゃう!
「あれ?…お兄さんですよね?」
優斗はすぐに私を見る。
思わずひきつった顔を向けちゃったけど、ここは何とか私の表情で察してほしい。
冷や汗もので優斗を見た。
ほんの数秒無言だったと思う。
だけど再び酒井さんの方へと視線が飛んだ時、私にしか分からない絶妙な素振りでふっと表情を崩した。
「…ああ、そうですよ。兄の優斗です。亜香里がいつもお世話になってます」
察してくれた…
彼が私の焦りに気付きすぐに合わせてくれたのが分かった。
勘の鋭どそうな優斗のことだ。きっと私が並べた嘘にこの時分かりやすく気付いたのかもしれない。