あなたと私と嘘と愛

「起きたんだ、おはよ」

髪が寝癖でボサボサしてる。
いつも斜めに流してる前髪が無造作に落ち目にかかってる姿は何だか面白い。
少しだけ幼く見える。

「気分はどう?少しは良くなった?」

「おかげさまで。あ、良かったらコーヒー飲みます?ちょうど今から作ろうと思って」

寝起きはこんな声なんだ。
ちょっとか擦れた低い声を聞いて何だが不思議な感じがした。

「珍しい、入れてくれんの?」

「まぁ、ついでなので」

それに昨夜のお礼も込めて。
あえて言葉には出せなかったけど、やっぱり感謝の気持ちはある。
心配してくれたのはありがたい。

「それはどうも」

ついでに簡単な朝食も作ってみた。
トーストに卵、果物を切って入れただけのヨーグルトだけど、案外美味しそうに食べてくれた。

そして「いただきます」から「ご馳走さま」へと時間が流れる。
昨日の出来事が嘘のような落ち着いた朝だった。
そうして可もなく不可もない朝食を終えたところで突然ピンポーンと来客を知らせる音が鳴った。

「…えっ」

ドクンと心臓が音を立てる。

まさか…

「あれ、お客さん?もしかしたら君の…」

「や、開けないで!」

「え?」

「出なくていいから!」

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