あなたと私と嘘と愛
思わず優斗が立ち上がるのを制止した。
だって坂井さんだったら…
驚く優斗を気にしてる余裕なんてなかった。
恐怖が込み上げる。
どんな顔して出たらいいのか分からない。
それ以上に会うのが怖い。
「お願い出ないで…」
「……亜香里?」
だけどインターホンは続けざまに何度も鳴った。
「…今喧嘩してるの…」という嘘の私の呟きに優斗は分かりやすく顔をしかめる。
そして早く出ろと言わんばかりの音は私を窮地に追い込もうとしてるみたい。
(どうしよう…)
だけどいくら経っても帰る気配はなく、さすがに痺れをきらした優斗がインターホンの前に立った。
「良く分からないけどさすがに出るよ…」
「あ……」
怖い怖いと体が叫ぶ。
せっかく温まった体が震えそうになる。
だけど優斗が応答した瞬間、聞こえた声は意外な人のものだった。