あなたと私と嘘と愛
目が合った瞬間ハッとした表情の坂井さんの口が動く。
「…それは…もう俺とは無理ってこと?」
「そうなります」
「…僕と別れたいの?」
「別れたいです」
絶句した坂井さんの顔が映る。
信じられないもの見るように言葉を無くし、動きが止まる。
次第にうつむき冷めかけのコーヒーに手を伸ばしたけど、途中まで持ち上げて結局彼は口に付けることなくソーサーに戻してしまった。
脱力したような目を向ける。
「……まさか君にもそんな事言われるなんて…」
か細い声がした。
「君だけは違うと思ってたのに」
「…?」
「亜香里も俺を否定するのか?俺の愛が間違いだって、異常だと非難するの?」
「だって…」
「好きな女の子を囲いたいって思って何が悪いの?俺だけを見て欲しい。俺だけを愛して欲しいと願って何がいけないんだ。俺はそんなに間違ってることをしてるのか?」
じっと見つめられ怯みそうになる。けど、
「…間違っても私は坂井さんの考えに賛同できない、です。
私は貴方の考えとは違う。
この先も自分の意思を変えれないなら他の人を探すべきです。自分の気持ちを理解してくれる人を見つけた方が幸せです」