あなたと私と嘘と愛
きっとお互いその方が幸せだ。
私はもう坂井さんを受け入れられないし、やり直したいと思えない。
「君を愛してるんだ」
「恋愛に対しての価値観が違いすぎるんですよ。私も期待に応えられなくて申し訳ないと思ってます。でももう無理です。ごめんなさい」
深々と頭を下げた。
分かってほしい。
もう貴方のことは好きじゃない。
一緒にいても楽しくない。むしろ疲れるばかりで自分が追い込まれる気さえする。
それを全部踏まえて冷静に落ち着いて言えたと思うのに。
「嫌だ、別れたくない」
坂井さんは酷く悲しい目を向けた。
「亜香里は俺の運命の相手なんだ。別れるなんてできない」
再びぞわっとした緊張が背筋にはしる。
「考え直してくれないか?」
ぱっと両手を捕まれ激しい嫌悪感が…
「…む、無理です」
坂井さんの目が怖い。
彼の余裕がなくなっている。そう感じた私も冷静さを失っていく。
「亜香里を愛してるんだ。愛してる愛してる」
きっとすんなりと理解して貰えない。
そうは思っていたけど、それを目の当たりにすると恐怖しか感じない。
今までにない強い視線に絶句しそうになったけど、捕まれた手を慌てて振りほどく。