あなたと私と嘘と愛
なのでまずは大浴場から。
「海を間近に望める場所」を売りにした露天風呂にも入りたいと提案すると、優斗は分かったと頷きながら何故かニヤリと口の端を上げた。
「家族風呂は?」
「え?」
「部屋の奥にあるみたいだけど入らなくていいの?せっかくだからそこも入ったら?何なら親子で一緒に入る?」
悪戯を含んだ笑みだった。
一瞬何を言われたのか分からなかったけど、すぐにそれが優斗からのからかいだと気付いた私は焦ったように「変なこと言わないでっ」と声を上げた。
それを見て可笑しそうに笑った優斗。
「何もそんなに真っ赤にならなくても」
「ゆ、優斗が変なこと言うからでしょ!?そういう冗談はセクハラだからねっ」
やっぱりははっと笑う優斗に背を向けた。
恥ずかしさと気まずさで視線なんか合わせられない。
く、悔しいけどかっこいい…
(まさか優斗がこんな冗談を言うなんて…)
洒落にならない。けど、妙に心が舞い踊った。
せっかく落ち着きかけた心臓が再びドクドクと暴れ出す。