あなたと私と嘘と愛
「んっ…」
優斗の舌が私の耳を味わうように舐める。ぬめりと耳の中に舌の感触がして背筋から快感が押し寄せる。それが気持ちよくて落ち着かない。ぞくりとして力が抜けそうになる。
「やっ…」とたまらず身を捩り前を向くとやたら甘い顔をした優斗の視線と絡む。
真っ赤にした私の頬に彼の手がそっと触れた。
「可愛いね亜香里は」
「っ…」
「怒ってないなら亜香里からキスして」
「はっ…」
「俺を安心させて。もっと亜香里に愛されたい」
「ちょ…」
熱を帯びた瞳が私を愛しそうに見つめてくる。それに激しく狼狽える。
(優斗ってこんな人だった?)
出会った頃の彼は無口でそっけなくて、他人をあまり近付かせないオーラを醸し出していた。ある一定の距離感を保ちながら拒絶するような。
「ゆう…、待って!へ、変だよ。最近なんか…っ、変わりすぎだからっ」
あの夜から変わってしまった。
思わず片手で優斗の胸を押し返す。もう片方の手はトマトを持ってるため、これが精一杯の抵抗なのだけど、そんな悪あがきは優斗の一言で呆気なく崩れ去る。
「だったらそれは亜香里のせいだよ」
「えっ?」
「亜香里が俺を変えたんだよ。間違いなく」
なんの迷いなく言われて目を見開く。
「亜香里が俺を受け入れてくれたから」
「で、でもあの人とは…」
「してないよ」
「え?」
「悠里さんとはこんなことしてない」
そこで何も言えなくなってしまった。
次の言葉を発っせようとした瞬間優斗が「やっぱり待てない」と呟き私の唇を奪ったから。