あなたと私と嘘と愛

「本当大丈夫だから優斗はゆっくりしてて」

「……」

あれ?返事がない。
と思ったのもつかの間、背後からにゅっと手が伸びてくる。水道を止められた私はそのまま腕を捕まれ優斗の方へと回転させられる。
背中はシンクにあたり、方手にプチトマトを持ったまま、ポタリポタリと水滴が床に落ちる。

「……」

「…え、と…」

(これはどうゆう…)

上から顔を覗き込まれて変な緊張が押し寄せる。優斗は黙ったままそんな私の様子を伺うように見るもんだから余計目が合わせられない。

一瞬反らしたものの、「亜香里」という静かな声にピクッと反応する。

「さっきのことまだ怒ってる?」

そんな言葉にハッとして慌てて顔を上げた。

「ま、まさかっ」

目が合った瞬間懲りずに顔が熱くなる。だって、予想以上に優斗の顔が近かったから。
思わずまた視線を反らしたところで再び沈黙が…。けど少しの間をおいてなぜかふっと笑われた。
私を観察したあと納得したように優斗が顔を近付けるから心臓がバクバクと暴れだす。

「顔赤いよ」

「…えっ」

「亜香里は分かりやすいね。いつからそんなに潮らしくなったの?正直そんな態度見せられるとたまらない。もっと構いたくなる俺の心理を分かってる?」

私を囲うよう両手をシンクにつけた優斗にビックリする。
優斗から発せられる予想外な言葉にどう反応していいか分からないでいると、

「あ、違うか。俺がただ単に構ってほしいだけかも。こんな風に」

ドッキーン。
余計近くなった顔に微動だにできない。
耳元に息を吹き掛けられて体が硬直する。そのまま耳たぶを甘噛みされれば嫌でも口から艶かしい声が漏れる。
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