あなたと私と嘘と愛
(どうしよう…)
「まゆぅっ…」
「亜香里!」
するとそこへ聞きなれた声が遠くから走ってきた。
けどそれは優斗ではなく、よく知っているセクシーでハスキーな声。
「やっぱりここにいた!」
「……うーちゃん?」
バタバタと駆け寄ってきた人物、それはうーちゃんだった。力なく座り込む私を見るなり驚いた様子で私の肩を掴む。
「ちょっと、悠里さんはここにはいないわよ。ごめんさないね、実は昨日病室が変わったこと優斗さんが電話で伝え忘れてたみたいで」
「え?」
「電話しても出ないからもしかしてと思って来たんだけど、優斗さんも慌ててたからねぇ。気が動転してたんだと思う。けど、亜香里もこんなとこで座り込んでないで電話してくれればよかったのに」
困った様子で覗き込むうーちゃんに拍子抜けする。
「じゃあ…」
「まだ悠里さんは生きてるわよ。困った子ねぇ…」
なんて呆れられて恥ずかしさより全身でホッとする。
隣で真由も安堵した声を出した。
「あの、それで悠里さんは?」
「ええ、こっちよ」
手を握ってもらいゆっくり立ち上がった私はうーちゃんと顔を見合わせる。
そして今度こそうーちゃんに連れられて母の病室までたどり着くことができた。
そこは一般の患者さんとは異なるフロアにある特別室だった。
見るとちゃんと母の名前も確認できた。
きっとマスコミなどの対策もありこっちに移動になったのだろう。
扉の目の前に立った私は一瞬立ち止まる。そして緊張の面持ちで扉を開けようとして…