あなたと私と嘘と愛
……あれ?
けどやっぱり静か。というから先生や看護婦さんがいる気配がない。
疑問に思った私はすぐにうーちゃんに視線を向ける。
(母は危篤なんだよね?)
普通もっと慌ただしく処置をしてるイメージなんだけど。
けどそれはスルーされて何故かうーちゃんに「静かに入ってね」と言われて背中をポンッと押される。
「私は外で待ってるから」
「…へ?」
一緒に入らないの?
振り返った瞬間すでに扉は閉まってしまい、私は困惑のままキョトンと立ち止まる。
「う、うーちゃん?」
「あとは自分の気持ちに正直にね。頑張って」
ますます意味が分からない。けどこのまま立ち止まってるのもおかしいので言われた通りあまり音を立てずにゆっくりと中へ進む。
するとそこはまるでホテルの一室かのような広さで豪華だった。
少し進んだところで優斗の話し声がした。だから私は思わずそちらに歩み寄ろうとして足が止まる。
「ーーで?亜香里には?
このまま本当に何も告げずに自分は逝くつもりですか?」
「そうよ」
「こんなにお願いしても?」
「無論よ」
…え、なに?
ドキッとしてその場で立ちすくむ。
「せっかく奇跡的にこうしてまた話せるようになったのに?」
「それがなに?」
「強情な人ですね。こんな風に倒れても頑固な部分は治らない。本当流石ですよ」