あなたと私と嘘と愛
「正直俺には分からないです。どうして大切な1人娘をあえて避けるのか。わざと嫌われるようにする心理は俺には分からないです」
優斗の呆れたようなため息が聞こえた。そして続けざま嘆きの声も、
「亜香里に憎まれたまま一生会えなくなってもいいんですか?本当に悔いはないんですか?」
「……ないわ」
少し間を置いてからの母の声。それを聞いて私もショックを覚える。
やっぱり私は避けられてる。
母にとって私はその程度の存在なんだと…
ズシーンと気持ちが重くなるのをぐっと堪える。
よく分からないけどこれ以上は進めない。進んじゃいけない気がする。
(帰ったほうが…)
ここは一旦引き返した方がいいかもしれない。
電話で聞いた話しとは違い、母は元気だしこんな状況で顔を合わせるのも気まずい。そう思って引き返そうとしたのだけど、再び母の声が耳に入ってくる。
「…今さら…よ」
「え?」
「今更そんなこと反省したって遅いでしょ?今まで散々好き勝手生きてきたんだから。母親としてじゃなく、女優としての人生を1番に考えてきた私に今更母親ズラする資格はないわ」
聞いたこともないとても寂しそうな声だった。
次第に覇気が消えていくのを聞いた私はやっぱり体の動きを止める。