あなたと私と嘘と愛

「あの子の笑顔は最強だもの。私にとって唯一生きる源だったから、その為なら何だってすると誓ったの。それが例え汚いことでもね。男にだらしないと言われようと、のし上がる為なら何だってしたわ。それであの子に軽蔑されても当然だって思ってる」

「……」

母の本音に言葉を見失う。
口元に手の平を当てた私の鼓動が緊張と驚きで波打っていく。

「その結果亜香里には寂しい思いをさせたわ。笑顔を守りたいなんて言いながら逆にあの子の笑顔を奪ったのは私自身だったんだから…
あの子が私の前で笑わなくなったのも随分前の話し。けど私は何もしなかった。それでいいと思った。
だって全て本当のことだもの。
何を言っても言い訳になる気がして亜香里とちゃんと向き合おうとしなかった。関係を悪化させたのは私よ。
その結果向けられる眼差しが否定と軽蔑だとしてもしょうがないことよ」

全て驚くような事実だった。
明かされる真実を聞いて微動だにできない。
母の本当の気持ちを知ってしまった今、頭の中で螺旋がぐるぐると広がる。気持ちの処理ができるわけもなく、


「…後悔、してるんですか?」

なのに追い討ちをかけるような優斗の言葉。

「本当は後悔してるんじゃないですか?」

「……」

間を空けた母がフッと息を吐く。
けどその直後何かを切り捨てたようなしっかりと否定した母の声が聞こえ。

「いいえ」

胸の奥に突き刺さる。

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