あなたと私と嘘と愛

「亜香里、そこにいるんだろ?隠れてないで出てこいよ」

ドッキーン!
不意打ちに呼ばれて心臓が跳び跳ねる。
今呼んだ?私のことを呼んだよね??
ビックリして体が硬直する。
それは当然母も同じようで、

「……え?」

「亜香里聞こえてるよね?いいから出ておいで」

やっぱり気付いてる?優斗は最初から私がいるのに気が付いて…


「…あ……」

そっか…
(これって…)
そこでようやく今までの良く分からない状況の意味に気が付いた。今置かれている状態が。
これってまさか…

優斗の近づく足音が聞こえ万事休す。逃げるタイミングをなくした私は観念し、恐る恐る死角になっていた壁から顔を出した瞬間、

「…こ、こんにち…は」

気まずさ100パーセントで挨拶をした。
直ぐにでも逃げ出したい衝動を堪えながら。

「よ、よく気づいた、ね」
「……は?」

予想通り母の絶句した返答が。
だよね。だよねと思いながら優斗と顔を合わせた途端とても場違いで穏やかな表情に見つめられた。

「久しぶり。来てくれて嬉しいよ」

嵌められた…
そう思った時すでに遅し。最悪なトライアングルが成立してることに気が付いた。
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