あなたと私と嘘と愛
「分かった。じゃあ一緒に行こうか?」
「え?」
「一緒に謝ろう」
そう言われ、有無を言わせず手を惹かれた時には母の姿が近付いていた。
驚いたのは当然で、けど優斗は何も言わずに私を母の前まで連れていく。
「悠里さん」
そして母の横たわるベッドの前に立つと真剣な面持ちで名前を呼んだ。
「離婚する前に一つ伝えたいことがあります」
「…なによ。私は亜香里を呼んだはずだけど?」
怪訝な顔して優斗に視線をとめる。
「最後に一つだけ…」
そう言うと突然頭を下げ、顔を上げた優斗に今度は私の方がギョッとする。
「もう分かってるとは思いますが、亜香里に手を出したのでその報告を。彼女と現在交際しています。なので今後は娘の恋人として俺のことを認めてもらえたら嬉しいんですが」
……へ?
「は、ちょっ優斗っ!?」
「お願いします」
彼の真剣な声が病室に響く。
ビックリし、優斗の名を呼んだけど優斗はもう一度頭を下げて私の手をギュッと握る。
「亜香里を本気で好きになってしまったので」
「…ゆう、と…」
その言葉を聞いてドクンと胸がざわつかないわけがない。
けどこれって謝るというより報告なんじゃ…
謝る気なんてないじゃん。
そう感じながらも温かい感情が私を襲う。
凄く嬉しい反面母の反応が気になってしまう私はチラリと視線を目の前へと戻す。