あなたと私と嘘と愛
「…え?」
今呼ばれたような…
自分の名前が呼ばれた気がしてハッとする。うっかり聞き間違いかと思いその場で狼狽えていると、もう一度今度はしっかりと私の名前が耳に届く。
「亜香里、こっちに来て頂戴」
「……」
「亜香里?呼ばれてるけど」
「…いや…」
この展開で行くのはさすがに抵抗があるんだけど…
もしかして私も怒られる?
今度こそ親子の縁をきられる、とか?
「こ、この状況で行く勇気がちょっと…」
「怖じけついちゃった?」
「だってあれは絶対怒ってるよっ。優斗だって分かるでしょ?聞いちゃいけない内容を聞いちゃったわけだし…」
ビクビクしながら優斗を見上げる。
よっぽど不安そうな顔をしてたんだろうか?
そんな私を見て優斗が小さく笑う。
「わ、笑いごとじゃないんだけど…」
そもそも誰のせいで…
「別に亜香里に対して怒ってはないから大丈夫だと思うけどね。心配しすぎじゃない?ずっと俺達の会話きいてたよね?」
「でもグルだって思われてたら?」
こそこそ話していたらそこでまた母からの催促の声が。「亜香里?」とはっきり言われてビクッと背筋を伸ばした私は突然優斗に手を繋がれる。