あなたと私と嘘と愛
「私もうじき死ぬの」
「……え?」
「肺癌でね、末期なの」
信じがたい事実に言葉を失くす。唐突にそんなことを言われてもすぐに納得できるわけなく、困惑した声が出る。
「……それっていつもの冗談ですか?」
俺に見せる軽いジョークだろうか?
「もってあと1年だって言われてる」
「だから…」
「私の最後を看取ってくれない?」
まともな話をしてほしい。そう思うのに、悠里さんの真剣な瞳がそれを壊そうとする。
「好きじゃなくていい。契約でいいの。まともじゃないことを言ってるのは分かってるわ。けど他に頼める相手がいないのよ」
これって演技じゃないよな?芝居の練習?苦しげに眉を寄せる悠里さんを見て様々な憶測をするけれど、
「お願いよ、優斗…」
そこで俺は彼女の真実を知ることになる。悠里さんの言っていることは全て本当で、病院の診断書やMRIの写真を見せられた俺は今起きている事実を飲みこむことになる。
「…他に知ってる人は…」
「まだ今は誰も知らないの。伝えたのは優斗が初めてよ」
悠里さんは言った。好きじゃないからこそ契約で籍を入れてほしいと。
自分が死ぬまでの間だけでいいから仮の夫になってほしいって。
家族になり病院の手続きや手助けをして欲しいと懇願された俺は当然だけど難しい顔を向ける。