銀光のbreath 【番外編 追加完了】
顔なんか、涙なのか鼻水なのか分かんないくらい。
ちはるよりひどい有様で。
ヤマトの首っ玉にかじりついて、わんわん泣いた。
「ずっと会いたかったのに」って。
泣きじゃくるあたしを力いっぱいに抱き締めて、由弦は何度も「瑠衣」って呼んだ。

ヤマトの声で。ヤマトの腕で。ヤマトの顔だけど!
でも由弦だった。

「・・・顔みせろ、瑠衣。もうこれが最後だから」

どこか悟りきったみたいな。潔い言い方に、胸元に埋めてた顔をようやく上げる。
両手で包み込むみたいに、掌で涙の跡を拭ってくれた由弦は。目を細めて淡く口角を上げる。

ああ、この笑い方も。由弦の。
話し方。()。空気。気配。
あたしが分からないワケない。

誰が信じなくたって。
間違えたりなんかしない・・・!

「せっかくのイイ女が形無しだ、どアホ」

意地の悪い言い方に思わずムッとして睨み上げた。

「あんたが泣かせたんでしょうが!!」

「・・・そうだな。俺は笑ってるお前に一番惚れてた。むくれてる顔も、可愛くてしょうがなかった。泣き顔はもう見たくねーんだよ、・・・瑠衣」

そう言ってあたしを見つめるヤマトの、顔の輪郭が。
少しずつぼやけてきてる気がした。



瑠衣。

声が耳の奥に直接ひびいてくる。

この感覚。知ってる。
あの時と同じ。



やがて。意識だけが、あったかい何かに包まれて。
ほんとうの由弦に。抱き締められてるって分かった。
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