月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「あ、あの……」

「クレハ。少し、休むんだ。」

そして、布団を足元まで掛けてくれた。

「ジャラールさん!私……」

「おやすみ、クレハ。」

するとジャラールさんは、私のおでこに、キスをした。


これで最後。

もう二度と、ジャラールさんに会えない。


「いや!」

私は頭を激しく、左右に振った。

「クレハ……」

「いや!ジャラールさんに会えなくなるなんて、そんなのいや!」

ジャラールさんは、私の顔を覗く。

「落ち着け、クレハ。これが最後じゃない。」

「ううん。分かってない!もう、この世界には来れない!!」

私がそう叫んだ瞬間、ジャラールさんは私を、強く抱き締めてくれた。

「そんな事はない!必ず会える!!」

耳元に伝わる、熱い吐息。

背中に伝わる、強い力。

でも心臓だけが、速い鼓動を知らせていた。


「ジャラールさん……」

「待っている。何年経っても待っている。この場所で、クレハをずっと、待ち続ける。」
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