月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
嬉しくて、涙が後から後から溢れてくるのに、どうしてか、可笑しくて仕方がなかった。

「いつまでもって……ジャラールさん。隣の国へ行くんでしょう?」

「……そう、だったかな。」

「それに、私をずっと待ってるなんて。ネシャートさんがいるのに、そんな事できないじゃん。」

するとジャラールさんは、息もできない程に、ぎゅっと抱き締めてくれた。

「ジャラールさん。」

「あっ、すまん。苦しかったか。」

離れようとするジャラールさんを、追いかけるように、今度は私から、ジャラールさんを抱き締めた。

「ううん。もう少し、このまま……」

ジャラールさんの両腕が、私を包んだ。

そっとジャラールさんの肩に、もたれ掛かると、知らない世界へ行った気分になった。


幸せ。

私の頭の中に、そんな言葉が浮かんでくる。


「ジャラールさん。」

「ん?」

「私、砂漠で死にかけた時、助けてくれたのが、ジャラールさんでよかった。」
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