月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「私もだ。あの砂漠で、倒れ掛けている君を見て、迷わずに助けに走ってよかった。」


大変な夢の中に来てしまったと思った砂漠の中。

喉が乾いて、死ぬかと思った時、助けてくれたのが、ジャラールさんだった。


遠い日のように思えるあの時を思い出そうとすると、目がトロンとしてきた。

「ジャラールさん、私、もうダメみたい。」

「大丈夫だ。クレハはただここで、眠り続けるだけだ。」

「ここで?」

「ああ、そうだ。クレハは、私の部屋で静かに眠り続けるんだ。」


そう考えると、またジャラールさんに、会えそうな気がするよ。

「そうだ、ハーキムさんの顔も、見ておけばよかったな……」

「あいつの事は、今はいい。」

ジャラールさんの、少し妬いた言い方が可笑しかった。


すーっと、ジャラールさんの腕の中で、眠りにつく。

よかったね、ジャラールさん。

ネシャートさんと、結ばれて。


最後に言えなかったけれど、

ジャラールさん、
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