月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「……ハ!クレハ!」

「ンニャ……」

ボーッとしながら、また目を開ける。

「光清。私、寝るって言ったじゃん。」

すると、誰かにおでこをペチッと、叩かれた。

「痛い!」

「そなたは、誰と間違えているのだ。」

「えっ?」

目を覚ますと、そこにはハーキムさんと、ジャラールさんが。


「ここは砂漠……?」

「見ての通りだろ。」

辺りを見回すと、夜まで話を聞いていたあの、宮殿の跡だった。

「顔を拭け。すぐに出発するぞ。」

私はハーキムさんから、少し湿らせただけのタオルを渡された。

「有難うございます。」

それで顔を拭きながら、化粧してなくてよかったと思った。


その間、二人は荷物を次々と、ラクダに縛り付けていく。

「クレハ。今日は私の前に乗るか?」

ジャラールさんが、手を差し伸べてくれた。

「えっ!本当?」

視界がパーっと開けた。

「じゃあ、お言葉……」
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