月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
"に、甘えて"と、言おうとした時、ジャラールさんの向こう側にいるハーキムさんが、私を睨んでいるのが分かった。

「い、いえ。私はハーキムさんに、乗せてもらいま〜す。」

そのままジャラールさんをすり抜け、ハーキムさんのラクダに近づいた。

「これでいいんでしょう。」

「ああ。いい娘だ。」

あっかんべーしながら、ハーキムさんのラクダに乗せて貰う。


「今日はどこまで行くんですか?」

ハーキムさんに尋ねると、ラクダは一回りして、ジャラールさんの乗るラクダに、寄っていく。

「ジャラール様。今日はオワシスの近くまで行きますか?」

「そうだな。なんとか急ごう。」

ジャラールさんのその一声で、2頭のラクダは勢いよく飛び出した。


速い。

昨日初めてラクダに乗った時よりも、はるかに速く走っている。

「大丈夫か?クレハ?」

後ろから耳元に、ハーキムさんの低い声が、響き渡る。
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