月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「な、なんとか〜〜」

前からの強い風に吹き飛ばされそうだ。

「手綱を強く握っていろ。」

言われた通り、手綱をギュッと握った。

すると心なしかハーキムさんの体が、私の背中にぴたっと張り付く。


いいっ!

男の人の体を触った事もないのに!

でも心なしか、強い風に当たっても、私の体は揺れる事はなく、安定している。


もしかして、私の為に?


なんだかハーキムさんの優しさを、背中越しに感じる。


「ハーキムさん。」

「どうした?」

「こんなに急いで、オワシスに行く理由って、何なんですか?」

案の定、ハーキムさんは黙りだ。

「すみません。」

私はすぐに謝った。

そう言えばこの人。

話しちゃまずい事は、口に出さないんだっけ。


するとハーキムさんは、私の顔の横に、自分の顔を近づけた。

「いいか。一度しか言わぬぞ。よく聞いておけ。」

「は、はいっ!」
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