替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「シャキア様…私はそろそろ、レベッカを迎えに行って参ります。」

「え?は、はい、わかりました。」

そう言った瞬間、サンドラさんの姿はその場から掻き消えた。



(わっ!)



魔法を目の当たりにして、一瞬、茫然としてしまった。
サンドラさんは魔法使いだから当然なんだけど…
やっぱりまだ慣れない。



それにしても、すごい話だった。
両親のこと…そして王妃様のこと…



今までがいかに平和な生活だったかを痛感した。
これといった悩みもなく…
贅沢とはいかないまでも、人並みの暮らしをして、人並みに恋もして…



久しぶりに、小林さんの顔が脳裏をかすめた。
勇気がなくてバレンタインデーには義理チョコのふりをして渡して...
でも、予想外のお返しをもらえて...



それだけのことなのに、私、めちゃくちゃ浮かれてた。
今思えば、本当に穏やかで平和だったな。



顔も知らない王子様に嫁ぐなんて、向こうではありえないことだよね。
しかも、場合によっては、毒を盛られるかもしれないなんて...
実の母親と姉妹が、現に毒で死んだり死にかけたりしてるなんて...



なんて厳しい世界なんだろう。



(私は異界に送られて、幸せだったのかもしれないね...)



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