替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




フェルナンさんのことは気にかかりながら…
その後も私は、元気になっていく芝居を続けた。



気が付けば、静養から戻って来てから、もうすでに一か月程の時が流れていた。
先日は、お城のバルコニーに出て、国の民に顔を見せた。
もう何年もシャルアさんは寝たきりだったから、民の歓迎ぶりもすごいものだった。
民の歓声を聞いていると、私が替え玉になったことはやっぱり正解だったと思えた。



元気になっていく替え玉の私とは裏腹に、本物のシャルアさんは少しずつ衰弱しているように感じられた。
窓のないあの隠し部屋が、体調に悪影響をもたらしてるんじゃないかとも思うのだけど、でも、シャルアさんが身を潜めるには、やはりあそこが一番だから悩ましい。



私が、シャルアさんにしてあげられることは、日々の様子を話して聞かせることだけ。
ただそれだけのことなのに、シャルアさんはとても楽しそうに聞いてくれる。
シャルアさんの笑顔を見ていると、この大役を引き受けて良かったと痛感する。



(そう…これで良かったんだよ、これで…
フェルナンさんのこともきっとすぐに忘れられる…)



私はそんな想いに、小さく頷いた。
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