替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
(サキ……)



横になって天井を見ていたら、自然とサキのことが頭に浮かんだ。
サキの苦しそうな泣き顔が……



今頃、サキはどうしているだろう?
うまくやってるだろうか?



ここに来たことが、正解だったのかそうじゃなかったのか、もはやよくわからない。
ただ…ルーサー兄弟が、悪い奴らではなくて良かったと、そう思う。



サキはきっと幸せになれるだろう…
リゴレットの王女としての大役を果たせるだろう。



残念だが、彼女はもう私の手を離れたのだ。
私にはもう何もしてやれない。
きっと、もう会うことさえ叶わないだろう。



一時は取り乱してしまったが、私も最近ではようやく心の整理がついたように思う。
それは、やっぱりルーサー兄弟の人となりを少しとはいえ、知ることが出来たからだろう。



(そう…サキが幸せならそれで良い…)



私はジャミナに戻り、元の暮らしに戻ろう。
元々、私は一人だったのだから…



以前のように薬草を採り、日々をただ静かに過ごすのだ。



そんな暮らしをどこか寂しいと感じてしまうのは、仕方のないことかもしれない。
でも、いずれは慣れるだろう…
そんな寂しい毎日に……



(さようなら…サキ……)



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