大天使に聖なる口づけを
アウレディオは自邸の庭園で、漕ぐでもなくブランコに座っていた。

月明かりの下でその光景を見たエミリアは、やっぱり彼は人間離れして綺麗だと思った。

それが本来の色なのか。
月の光を受けて金色に輝く髪も、煌めく瞳も、母のような真っ白な翼がそのまま背中にあっても全然おかしくないほどに美しい。

このままずっとこの場所に閉じこめておきたいと、強く願わずにはいられなかったが、息を潜めていてもエミリアがやってきたことは、もうアウレディオにはわかっているだろう。

「ひょっとして来ないんじゃないかと思った」
思ったとおり、こちらをふり返りもしないで口を開く。

「そんなことしたら、ディオは絶対に私を許さないでしょう? そんなの嫌だもん」
真正面に回りこんで芝生に腰を下ろしたエミリアを、アウレディオは真っ直ぐに見つめた。

「……ああそうだな」
「だから逃げも隠れもしないで来たわよ」
わざと怒ったように頬を膨らしてみせるエミリアに、アウレディオの表情も緩んだ。

お日様のような笑顔がエミリアを見つめる。
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