あの夏に見たあの町で
大量に料理を注文して、「以上で」と言った後もメニュー表を覗き込み続ける専務にバクバクと心臓が煩くて、このままでは高血圧で倒れてしまうと判断し
“専務、近いです”とフランス語で小さく呟いた
気にすんなとか大して近くもないとか言われるかと思ったけれど、意外にも“悪い”とメニュー表から離れていって、安堵の息を吐く
“イチャつくなら2人だけの時にしてくれる?”
斜め向かいから冷やかしを入れた声の主をメニュー表の上から覗く
顔は微笑んでいるけれど...目はイタズラをする子どものよう...
いやいや専務とはそうゆうのじゃありませんから!
「ちょっと!私にもわかるように日本語で喋って!」
張本さんにメニュー表を奪われ、私の両手はメニュー表を持っていた状態のまま空を持つ
「失礼しました。イチャつくなら2人の時にしろって言ったんです」
有沢さんの言葉を聞いて激しく頷く張本さんは「そういえば」と話題を変える
「専務と有沢さんは仲が良いみたいですけど、元々お友達なんですか?」
こけしそっくりな頭を傾ける