幼なじみとナイショの恋。
「だから、月に一回優待券的なのが貰えるらしいんだけど、井田はこういう系統の服は着ないからって余りに余ってたらしい。これからも使う予定がないから、あんたに使いたいって」
「な、何でっ……」
「さぁね。そんなの自分で考えな」
古賀さんは素っ気なくそう言うと、「飲み物買ってくる」と言って試着室の外へと出て行ってしまった。
「井田さん、本当にいいの?」
「いいんですいいんです!使わなきゃ捨てるだけなんですから!かえって、使う機会を与えてもらって助かりました!いつも“なんで使わないんだ!”ってお父さんにグチグチ言われてウンザリしてたんですよ〜」
「それならよかったけど……。本当に本当にありがとう」
「どういたしまして!」
何でも、この後井田さんは用事があるらしい。
井田さんを見送るために再び駅まで来た私は、改札前で井田さんに今日のお礼を伝えたところだった。
古賀さんは、そんな私達を離れたところから見守っている。
「蒔田さん。本当に良く似合ってます。蒔田さんは、とっても可愛いです。自信を持ってください」
井田さんは、柔らかい笑み浮かべながら諭すようにそう言う。
それから、コソコソ話をするように口の横に手を当てながら、私に小さく手招きした。
何だろうと耳を近づけると。