幼なじみとナイショの恋。
この気持ちを押し込めて、誰にも見つからないように蓋をしておくなんて、
もう、できない。
真っ直ぐ見つめた先のお母さんの顔は、怒りで真っ赤に染まっていた。
唇が小刻みに震えている。
「……あれほど……言ったのに……」
「お母さ……」
「……あなたなんて、産まなきゃよかった」
下手すると聞き逃してしまいそうな小さな声でそう言うと、お母さんはすぐにはっとした顔をした。
顔面蒼白な私に気づいたんだと思う。
「結……」
「ごめん……なさい……」
「結衣!」
気づけば家を飛び出していた。
夏の夜の熱気が顔にかかり、ずっと我慢していた涙が零れてくる。
大丈夫。
覚悟はしてた。
だけど、ちょっとだけ思ったよりもショックが大きかっただけ。
ひとしきり走って、息を切らし辿り着いた先は、昔はるくんとよく遊んだ公園。
夜ということもあってか、人っ子一人見当たらず、夏の虫の鳴く音と街灯に虫がぶつかる音だけが聞こえてくる。
ふと鼻先に小さな衝撃を感じて空を見上げた。
星一つ見えない真っ黒な夜空から、ポツリポツリと雨粒が落ちてきて、次第にまとまった雨が降り始めた。
そういえば、夕方に見た天気予報で、気象状態が不安定なため、局地的に急な雨が降るかもしれないと言っていた。