幼なじみとナイショの恋。
そして、先に目を逸らしたのは、お母さんの方だった。
「……話にならないわ」
そう言って、お母さんは小さな溜息をつく。
もう、どうしたってお母さんには、伝わらないの……?
「とにかく、帰るわよ」
そう言って再び手首を掴まれたのと同時に、お母さんの手とは違う温もりが重なった。
「はるくん……?」
はるくんの手は、私の手首を掴むお母さんの手を優しく剥がすと、私の手を優しく握る。
「結衣は、誤解してる」
「……え?」
「結衣はきっと、俺がいなくても今の結衣だよ」
はるくんは、そう言って私に微笑むと、今度はお母さんへとまっすぐ姿勢を正した。
「結衣に友達ができたのも、俺が結衣の側にいるのも、全部結衣の力です」
大きく目を見開くお母さんに、はるくんは言葉を続ける。
「昔からおっちょこちょいで泣き虫で、そのくせ強がってばっかりで。すぐ一人で引きこもるし、意外にすぐ怒るし、食いしん坊だし、それから……」
「は、はるくん!?」
な、何で突然悪口大会が始まっちゃったの!?
チラリお母さんの方を見れば、眉をひそめ目を瞬かせている。
「本当に目が離せなくて、苦労かけられっぱなしですけど、結衣は自分で気づいてないだけで、本当は誰よりも強い子だと俺は思ってます」
……え?